たいていの方はフロアコーティングについて詳しく知っているということはないでしょう。そのような状態でフロアコーティング会社による情報にさらされると場合によっては、却って混乱してしまうこともあると思います。とくにインターネットでは一見すると客観的なフロアコーティングについてのサイトに見えてもほぼ全てがフロアコーティング会社による販売プロモーションだからです。
自社フロアコーティングへの誘導である以上はそこに記載された情報は意図的に歪められている可能性があります。そこで本記事ではまず基本的なフロアコーティングの成り立ちや現状について解説します。すでにどの会社へ依頼するかという段階の方のなかには関係ないと考えられることもあるかもしれませんが、知っておいて損はないはずです。ぜひ、一読ください。
フロアコーティングの歴史
フロアコーティングは建物の内装工事のひとつとも言えなくもありあませんが、たとえば壁紙のように必ず建築の際には標準工程に取り込まれるものですはありません。通常はオプションとしてエンドユーザーに選択が委ねられるものです。もしくはご自身で直接、フロアコーティング会社へ注文する必要があるものです。
起源・経緯
フロアコーティングは新規に竣工される住宅の床にフローリングが採用される割合の増加とともに実施される人が増え、広く認知されるようになりました。起源はおおよそ2000年前後ですからまだ施工サービスとしては新しい部類のものです。
この新しい施工サービスが広く受け入れられるようになったきっかけはマンションのインテリアオプション販売会です。新築マンションの契約者に対するインテリア商品の販売会に参与すると、他のカーテン、エアコン、造作家具などの商品を尻目に注文が殺到することもありました。
好調な売り上げは当然のことながら波及効果を生み、しだいにマンションのオプションサービスにとどまらず、さまざまな住宅関連業の現場で販売されるようになりました。
また、ほどなくインターネットを介した直販業者が多数出現し、すでに2005年前後には現在と変わらないような環境となっています。
定義すると
フロアコーティングを定義すると以下のようになります。
「フローリングを塗装することにより美観の向上と経年による自然消耗、家具等による擦り傷、汚れの染みつきから長期間に渡り保護する。」
定義について詳しく説明します。塗装とはコーティング剤を塗ることです。フロアコーティングに使用する塗料に決まりはありませんが、よく使用されるのは水性・油性のウレタン塗料、シリコーン塗料、常温ガラス塗料などです。基本的に塗料は色のついたものではなくクリア塗料を使用します。
美観とは言いかえると艶感のことです。クリア塗料を塗布することでフローリングの光沢値があがり、より木目が明瞭になり見映えがします。また、最近ではあえて光沢値を抑えた半艶や艶消しのフロアコーティングも人気です。
経年による自然消耗はあまり意識されないことですが、とくに傷つけ行為や水分を多量にこぼす、というようなことがなくても自然に消耗します。毎日上を歩くこと、日差し、乾湿の変化、等の影響を受けます。そのことによりフローリングに使用されている素材が摩耗したり、素材が変質するのです。フロアコーティングすることでそのような消耗を軽減することができます。
家具等による擦り傷は例えば椅子の引きずりのことです。自然消耗とは違い人為的なフローリングへのダメージのことをいいます。フロアコーティングは塗膜でフローリングを覆うことで直接、床が傷つくことを抑制したり、傷の程度を軽減します。
汚れの染みつきは汚れが付着することではなくフローリング表面から内部に入り込んだ、拭いても簡単に取れないような汚れのことです。これもフロアコーティングの塗膜により未然に防いだり、染みつきの程度を軽減します。
ワックスとの違い
上述した定義は一見するとワックスを塗布することにも当てはまるようにみえます。ただし、文末のほうの「長期的に」という部分はワックスには当てはまりません。なぜならワックスは基本的に一定期間(半年ほど)キレイな状態を保つように設計された製品だからです。
ワックス液剤の組成は剥離剤という専用クリーナーにより簡単に分解され取り除くことができるようになっています。テナントビル、デパート、展示場などの商業施設では一般住宅の何倍も土足での歩行量があり汚れやすいため、このようにリムーブ可能な性質があるほうが有利なのです。
フロアコーティングはワックスよりも強度の高い塗膜を形成する塗料を使用します。簡単にリムーブできない代わりにアルカリ性の液剤にもある程度耐えることが可能です。また光沢による美観効果を主目的としたワックスと比較してはるかに床を保護する効果が高いのがフロアコーティングの特徴です。
フロアコーティングに使用される塗料
フロアコーティングに使用される液剤には様々な種類があります。油性・水性ウレタン塗料、シリコーン塗料、常温ガラス塗料などが代表的な使用塗料です。使用塗料により塗膜の硬度、厚み、耐薬品性などが違ってきます。その違いによりフローリングを傷、摩耗、汚れの染みつきを抑止する効果に差異が生じ、ひいてはフロアコーティングの耐用年数に影響します。
「ずばり、どれが一番いいの?」と言いたいところだと思いますが、じつはこれに答えるのは難しいことです。理由は各塗料とフローリング床材には相性のようなものがあるからです。また、それぞれに特徴も異なります。ユーザーの属性という面でも家族の人数や構成(大人だけとか子だくさんとか)やペットの有無、生活の態様なども影響します。
フロアコーティング会社は使用塗料とは別に独自のネーミングをフロアコーティングに与えることが通常です。もしフロアコーティングを検討中なら、実際の使用塗料を聞き出すことをおすすめします。なぜなら、どんなに上手くプロモーションしても実際の性能は使用塗料を超えることができないからです。