リフォームすることを前提として中古マンションを購入されたお客様よりフロアコーティングのご依頼を受けました。とても程度のよい物件でしたが、残念なことに新築時に施されたと思われるUVフロアコーティングの一部がペロリと剥がれてしまっています。他の部分はおおむね良好な光沢感が保たれているだけに惜しい感じがします。
今回は現場でのフロアコーティング塗膜の修復方法の紹介と共に、塗膜が剥がれてしまう原因についてお話します。当社が誇る腕利きのフロアコーティング職人がこのひどく剥がれてしまった部分をキレイに修復しますので、ぜひ最後までご覧ください。
フロアコーティングが剥がれる原因

フロアコーティングがこのように大きく剥がれることは滅多にないことではありますが、このようなレアケースも実際にはあります。以下にその原因について簡単に解説いたします。
密着不良
密着不良とは床のクリーニングが不十分な場合に起こる施工不良です。床に油分や洗剤が付いていたりすると塗膜硬化後であっても剥がれることがあります。ただし、この場合何年も経ってから起こるということはほとんどありません。
膨張率の問題
今回のケースはフローリングとの膨張率の差によるものと考えられます。膨張率とは床が湾曲したときに生じるフローリングとコーティング塗膜の物理的変化の違いのことです。フローリング撓ったときにコーティング塗膜もそれに追従するように撓るとよいのですが、そうでない場合は塗膜とフローリングの間に空間が生じます。
実際に今回の現場では他にもいくつか小さなものではありますが、塗膜内部にマメのような空胞が生じていました。それが破れると剥がれになりますし、少しでも剥がれが生じるとどんどん広がってきます。
適切な塗膜の厚さが重要

樹脂ワックスのように柔らかい塗膜よりも、むしろUVフロアコーティングのように硬度のある肉厚な塗膜で、このようにペロリと剥がれる現象が起きます。
UVフロアコーティングで一般的に使用される塗料は油性ウレタン塗料です。石油系の溶剤が含まれるため使用状況によっては過度な揮発により、想定の塗膜硬度よりも硬く変質することがあります。
塗料は成分の調整により対象素材へ定着するように設計されています。ところが施工の際に厚塗りしてしまったりすると不具合の可能性が高まります。いつも私が言うように現場での施工作業は違いを生みますからとても重要なのです。
UVフロアコーティングは推奨できないのか
上述しましたように施工次第なのです。今回の修復施工では剥がれていたピース全体を刃物で剥がしにかかりましたが塗膜の厚いところと薄いところが混在していました。
剥がれの中心部分は塗膜が厚く取り除けたのですが、剥がれの生じていない部分は塗膜が薄いため刃物が塗膜と床材表面の間に入らず研磨するしかなかったです。このことからも厚塗りが剥がれの原因だったことが推測されます。

フロアコーティング業界ではUVコーティングというと油性ウレタン塗料に紫外線硬化触媒を含めたものが一般的ですが、当社ではより塗膜硬度の高いシリコーン塗料タイプの紫外線硬化型塗料を使用しています。塗膜硬度がより高いため塗膜設計を薄くすることができ床への追従性が向上するからです。
現在人気のガラスコーティングも超高硬度ながら薄膜設計になっているため、UVコーティングと比較すると光沢感はやや控え目ながら剥がれリスクが非常に少ないものとなっています。当社のフロアガラスSiでは現在のところ今回のような層間剥離は起きておりません。
高硬度の薄膜設計
たまに他社フロアコーティングの塗りサンプルを目にする機会がありますが、見た目重視のためか、びっくりする位に厚塗りしていたりします。サンプルだけならよいのですが、もし本施工でも同じように仕上げているとしたらちょっと危うく感じます。
一般の方のなかにはコーティングは厚いほうがよいと思う方もいるかもしれませんが、どんなに塗膜が厚くても表面が摩耗すると白く曇ったようになり見映えが悪くなります。
フロアコーティングの経年使用による消耗に関わるのは塗膜の硬度です。硬度が高い方が擦り傷や摩耗が生じにくいです。またフローリングへの追従性も薄膜のほうが有利ですから、剥がれるリスクが減少します。新品の消耗していないフローリングにおいては高硬度・薄膜仕様が理想的です。
なお正直に申し上げて、光沢だけは肉厚な方が艶感が向上します。ただし高光沢に仕上げるとちょっとした明かりの加減で擦り傷が浮かび上がったりします。適度な艶は良いのですがピカピカすぎると却って落ち着きません。これは個人的な意見ですが、同意される方も多いのではないでしょうか。
剥がれた塗膜の修復作業
剥がれている部分のみに塗装しても境目が目立ちますので、問題箇所のピース全体の塗膜を刃物で剥がしにかかりました。
結局全ては剥がせなかったのですが8割方剥がすことに成功しました。残った部分はサンドペーパーを粗い目から細い目のものまで順に使用して研磨しました。
すべてUVコーティングの塗膜を除去したのちに左右のピースと艶が合うよう数回塗装しました。今回のご依頼はフロアプロテクトAP(環境配慮型2液性コーティング)ですから既存のUVコーティングとは異なるのですが艶感は合わせることが可能です。

修復作業が終了してから、さらに全体をコーティングして完了しました。ひときわ目立っていた剥がれ部分はすっかり修復され美しいフローリングが取り戻されました!