当社にフロアコーティングのお問い合わせをしてくるお客様にはガラスコーティングのフロアガラスSiを指名してくる方が少なくありません。ガラスコーティングはフロアコーティングの中で最も強度の高いものとして認識されてきています。

一方ガラスコーティングが台頭してくる前にはそのポジションにいたのがUVフロアコーティングです。いまでも多くの施工会社で高性能なコーティングとして推奨される定番のコーティングです。

当社にお問い合わせいただくお客様にもガラスコーティングとUVコーティングを比較検討する方は最近とても多いです。ということで、今回はこの両者を簡潔に何がどう違うのかお話したいと思います。まずはじめにそれぞれのコーティングについて少し説明します。ガラスコーティングやUVコーティングが表す内容を明確にする必要があるからです。

ガラスコーティングの成分

常温ガラス塗料を使用したフロアコーティングをいいます。ガラスという言葉から窓ガラスや食器のコップを思い浮かべるひともいるかもしれませんが、実際にそれらと同様に珪素という鉱物が含まれます。従来は高炉で溶かして使用するガラスを常温で扱えるようシリカ溶液にしたものが常温ガラス塗料の主成分です。

鉱物はすなわち無機物質ですから有機物のように朽ちることはありません。コーティング剤としての常温ガラス塗料には有機物も含みますが、無機物とのハイブリッドのため塗膜が汚染されにくいという特徴があります。塗膜に汚れが入り込んだり、黄変したり、といったことがなくクリアな状態が通常の有機成分で構成されたフロアコーティングよりもより長く保たれるのです。

常温ガラスコーティングの身近な例でいうとスマートフォンの液晶を守るためのフィルムなどに最近ではよく用いられます。透明度が高く、傷がつきにく硬度があり、さらには薄膜に仕上がりますので液晶の保護にはうってつけのコーティングなのです。

フロアコーティングにおいては2~3社ほどの塗料メーカーのものが使用されます。溶剤としてはアルコールを使用したものと石油系の物が存在します。溶剤とは塗料のベースになるもので、水に主成分(たいていは合成樹脂です)を溶かし込んだものは水性塗料、石油系溶剤(シンナー)に溶かし込んだものは油性塗料です。アルコール系溶剤の場合は厳密にいうと油性となりそうですが揮発性化学物質の面ではかなり環境にも人に優しい成分です。当社もアルコール系のガラスコーティング剤を使用していますし、お客様にもお勧めします。

UVコーティングの成分

UVコーティングの成分の前に、まずは「UV」について説明しなくてはいけません。たまにUVカット塗料と勘違いされるひともいますが、UVとは紫外線硬化型塗料のことです。紫外線に反応して硬化する触媒を含む塗料全般または工法のことです。

UV硬化型塗料には水性ウレタン塗料、油性ウレタン塗料、シリコーン塗料などがあります。ですからUVコーティングといっても実際は様々なコーティングが存在することになります。ただしフロアコーティング業界では一般的に油性ウレタン塗料のUVタイプのことを指す場合が多いです。もっとも最近では水性ウレタンやシリコーンのUVタイプもよく耳にしますが、この記事ではUVコーティング=紫外線硬化型の油性ウレタンコーティングということで話を進めます。

油性ウレタン塗料は昔からある塗料タイプです。シリコーンやガラス塗料ほどは塗膜硬度は高くありませんが、ある程度の強度と塗膜の厚さがあります。塗膜が厚いため光沢感が強いのが特徴です。紫外線硬化型になっても基本的にそれらの特質は変わりません。

塗布後、紫外線照射機という器具でもってUVを照射することで直ちに硬化します。通常の油性ウレタンコーティングでは何時間も硬化するまで待たなくてはなりませんからコーティング実施後、引っ越しまでの時間がほとんどない方にはメリットです。ただし石油系溶剤を含みますので揮発性の刺激臭はそれなりにします。

それぞれ単独の説明は以上です。以降は比較になりますので、ぜひ続けてご覧ください。

UVコーティングとガラスコーティングの比較

塗料成分や施工方法など技術的なことはさておき、ユーザーであるお客様にとって必要なことについて述べます。ポイントとなるのは次の5つです。

  1. 傷つきにくさ
  2. 耐用年数
  3. 安全性
  4. 光沢感
  5. お値段

順に説明いたします。

1.傷つきにくさ(床保護効果)

フロアコーティングはフローリングを保護するものですから、コーティング塗膜はその犠牲となってボロボロになっていきます。というのが初期のフロアコーティングでした。でも、いくらフローリングへの直接な傷付きを守るといってもコーティング塗膜に無数の傷が生じたり、剥がれたりするのはイヤなものですよね。

そこで、フロアコーティングはどんどん塗膜が傷つかないよう硬くなる方向へ進化してきました。その頂点に君臨するのがガラスコーティング!塗膜の硬さはガラスコーティングの一番のメリットであり特徴なのです。

塗膜の硬さはJIS規格の鉛筆硬度試験により明確に数値で表すことができます。一般的なUVコーティングが3H~5Hなのに対してガラスコーティングでは7H~9Hの硬度があります。(※鉛筆同様に数値が大きいほうが固い)

そのため家具等での擦り傷や子供の玩具等でのイタズラに対して傷がつきにくいのです。UVコーティングでも通常は十分すぎるほどの硬度ですがガラスコーティングはそれに輪をかけて強力な性能なのです。このことはUVコーティングに対してガラスコーティングは大きなアドバンテージがあります。

2.耐用年数

フロアコーティング外壁塗料のように紫外線や降雨などにより化学的に変質して劣化するというよりは、物理的な摩耗による使い減りで耐用年数が決まります。毎日の歩行や家具を動かすことによる摩耗で徐々にすり減ってくるのです。

「えっ歩くだけですり減る!?」と思うかもしれませんが、例えば歩いた時に足元はツルツルと滑らないですよね。ということは摩擦抵抗が働いているということですから塗膜には負荷がかかっている状態です。家族の皆が日々何年も何年もくり返し歩くことで廊下なら中心部が両脇よりも早く摩耗して白く曇って見えてきます。

UVコーティングとガラスコーティングのどちらがより耐用年数が長いのか。ということはどちらがより摩耗しずらいのかというふうに言い換えることができます。そうなると有利なのはやはり塗膜硬度の高いガラスコーティングです。

ただし公平を期すために付け加えると一般的にUVコーティングのほうが塗膜自体は厚いです。塗膜が完全になくなるまでが耐用年数ということならUVコーティングが有利といえますが、そのような使い方は現実的ではありません。(その場合は耐用年数が何百年ということになってしまいます。)

実際にはフロアコーティングの場合は上述したように使い減りによる消耗ですから、自動車のタイヤが年月よりも走行距離で使用期間が決まるのと同様です。家族の人数や使い方によって耐用年数は大きく変化します。ですから具体的な年数を挙げるのは難しいのですが、強いて言うならUVコーティングやガラスコーティングなら少なくとも10年、場合によっては20年くらいはノーメンテナンスでいけるとと思います。とくにガラスコーティングなら傷や摩耗の少ない良い状態を長く保ってくれるのではないでしょうか。

3.安全性

ここでいう安全性は揮発性化学物質(VOC)の問題です。水性のコーティング以外ではコーティング剤には必ず溶剤という揮発性のある液剤が含まれます。

UVコーティングは石油系溶剤、ガラスコーティングの場合はアルコール溶剤が含まれます。(※例外もありますが本章ではこれをベースに話を進めます。)どちらのコーティング剤も建築内装材として無制限に使用してもいいよというF☆☆☆☆(エフフォースター)の認定を受けているのが一般的です。ですからどちらも安全性の高いものといえます。

けれども、より突っ込んだ話をすると、じつは国交省の定める塗料試験はホルムアルデヒドの放散量のみです。ところが、他にも有害な化学物質はたくさんあります。化学物質過敏症や喘息、アレルギー症状が気になる方は石油系溶剤のUVコーティングよりもアルコール溶剤のガラスコーティングのほうが安心です。ガラスコーティングは食品衛生法、食品添加物等の安全基準も満たしています。

4.光沢感

仕上がりのツヤのことをいっています。この点では明確にUVコーティングのほうが強いテカリ感があります。UVコーティングのほうが塗膜が厚いからです。

ガラスコーティングではUVコーティングの半分程しかツヤが上がりませんので、とくにシートフローリングなどで多い半艶仕上げの床材ではごく控えめな艶感となります。これは人によってはデメリットかもしれませんね。ただし、ツヤが退けることはありませんので元々艶感のある床材ではそれなりに強いツヤとなります。(冒頭の写真をご参照ください)

5.料金

気になるお値段はどうでしょうか。UVコーティングは性能の高さからフロアコーティングでもっとも高価格なものです。一方のガラスコーティングはというと、やはり性能に比例して高価格です。相場的にはだいたい同じくらいでしょうか。本来はガラスコーティングのほうが塗料原価は高いのでお値段も高くなるはずですが、根強いUVコーティング人気や景況により強気のプライスがつけられないのです。

どちらも高性能で長持ちしますので、リピートの依頼があっても何十年も先になります。施工会社としては決して安売りできないコーティングです。逆にもし相場よりも何割も安くだしているUVコーティングやガラスコーティングがあったとしたら疑ってかかったほうがよいかもしれません。

けれども数年前の価格からするとどちらも値頃感のある価格になっています。長引き不況感やコーティング会社間の競争からどちらかというとフロアコーティングの価格は下落傾向なのです。ということは今がチャンスかもしれませんね!