美観の向上だけではなく、床保護効果・耐久性を兼ね備えたフロアコーティング。フローリングの美しさを長く保つには、床材に合わせたコーティング選びが欠かせません。本記事では無垢・複合・シートなど代表的なフローリング床材別に、相性の良いコーティング種類と選び方を専門家がわかりやすく解説します。

フローリングコーティングの基礎知識

フロアコーティングをマイホームに導入することで得られるものや、注意点について、先ずは知っておいてほしいことです。

フローリングのコーティングとは

フローリングの表面にコーティング剤を塗布して保護膜を形成する技術です。目的は、フローリングを傷や汚れから守り、耐久性を向上させることです。主な種類にはガラス、UV、シリコン、ウレタンなどがあり、それぞれの特性を理解することで、最適な選択が可能になります。

施工するメリット

  • 傷や汚れからの保護:保護膜により、床を傷つき・シミから守ります。
  • 美観の向上:見た目が艶やかになり質感が上がります。(落ち着いた感じになる艶消し系もあります) 
  • 長期の耐久性:ワックスのように塗り替えを前提としたものではなく長期的な保護効果があります。
  • 滑り防止効果:保護膜はフローリングを滑りにくくします。
  • 掃除のしやすさ:水拭きが可能。汚れ落としがラクになります。

注意点とデメリット

  • コスト:費用はマンション3LDK(施工面積:50㎡)の施工で15〜25万円が相場です。
  • 乾燥時間:コーティング種類によりますが、半日から2日間ほどは硬化乾燥のため入室が制限されます。

初期費用はかかりますが、ワックスのように頻繁に塗り替える必要がないため維持費はほとんどかかりません。乾燥時間については、施工した日から使用できる速乾性のあるコーティングもあります。

床材タイプ別に見る特徴と相性のよいコーティング

フロアコーティングの施工風景
作業風景

フロアコーティングを施工するという観点からみた床材の特徴と、専門家が経験をもとに相性のよいコーティングを推奨します。

無垢フローリング

一枚板の床材で樹種はオーク・メープル・ウォールナット(広葉樹)、ヒノキ・パイン(針葉樹)などがあります。表面の仕上げは、素地、自然塗料、造膜塗料があり、造膜仕上げは突板と同じように扱うことができますが、他の仕上げは、水がしみ込むことが避けられず、メンテナンスには手間がかかります。また、天然木のため経年変化は大きいです。

適合するコーティング

推奨
  • 素地仕上げ・自然塗料仕上げ:環境配慮型ウレタン
  • 造膜仕上げ:ガラス・シリコン・環境配慮型ウレタン

素地仕上げ・自然塗料仕上げの場合は、下塗りを含む複数回の塗布作業が必須で、ケバとり研磨といって、塗装したときに木繊維が細かく毛羽だってくるのでサンドペーパーで均す必要があります。このような施工工程を考慮すると推奨は環境配慮型ウレタンです。艶消しを選ぶと無垢ならではの風合いも保たれます。

造膜仕上げは、突板フローリングと同様に表面にクリア膜が施されていますので、さまざまなフロアコーティングと適合します。床保護の強化が目的ならガラス、滑り防止ならシリコン、環境性や艶消しの質感を重要視するなら環境配慮型ウレタンがおすすめです。無垢は気温・湿度等により伸縮する度合いが大きいため、厚く仕上げすぎると、「割れ」や「剥がれ」のリスクがあります。UVは塗膜が厚く仕上がる傾向があるため推奨には含めませんでしたが、実際に使用する塗料種類(UVは工法であって種類ではありません)にとっては良い仕上がりになります。

複合フローリング

複層に重ねられた集成材や加工木材の上に、化粧板として見た目の美しい天然木材を配置したものが複合フローリングです。
化粧板の厚みにより、突板フローリングと挽板フローリングにわかれます。突板は0.2mm程のものが多く、挽板は2〜4mm程のものが一般的です。
突板は、無垢や挽板とくらべて低コストで以前は多くの新築マンションや一戸建てで採用されてきました。挽板は複合フローリングの形状安定性と無垢の質感の良いとこどりをした床材で高級品として流通しています。

適合するコーティング

推奨

ガラス・UV・シリコン・環境配慮型ウレタン

突板は基本的にはさまざまなコーティング種類と適合します。ただし、使用歴の長いものはクラックといって木目に沿ってひび割れをおこしているものが少なくありません。この場合は、塗膜に厚みのあるものがよく、ガラスは高硬度であっても薄膜設計のため適しません。

挽板は銘木を使用した質感の高いものが少なくありません、その風合いを維持したいなら艶消し系がおすすめです。

シートフローリング

現在主流の床材で新築住宅の90%以上がこのタイプのフローリングです。複合フローリングの一種で構造や規格サイズは同じですが、化粧板として木目模様がプリントされたオレフィンシートが使用されます。表面には細かい凹凸が施され、環境配慮型塗料によるクリア膜が塗装されています。最近のものは、艶消し仕上げになっているのも特徴です。

適合するコーティング

推奨

ガラス・シリコン・環境配慮型ウレタン

ガラスコーティングなら元の艶感や木目模様のトーンをあまり変化させずに、トップレベルの床保護効果が得られるます。小さなお子様やペットがいるご家庭にはとくにおすすめです。シリコン、環境配慮型ウレタンも密着際には問題なく、適合します。UVはフロアコーティングでは紫外線硬化型ウレタン塗料のものがよく使用されてきましたが、このタイプは強溶剤型のためシートのクリア膜とは適合に問題があります。ポリエステルアクリレート系や水性タイプなら適合性に問題ありません。

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シートフローリングのコーティングについては、こちらの記事もご覧ください:

シートフローリングにフロアコーティングは必要?構造・弱点・最適な種類まで詳しく解説

床材タイプによるコーティング適合性の注意点

同じ種類の塗料であっても、その成分や構成内容には幅があり、適合性や仕上がりに影響します。
床材に関しても、例外的な対応が必要なものもあります。たとえば突板フローリングではWPC加工といって液体を弾くような性質が付与された床材がありますが、このタイプは実際に使用する塗料との密着試験を行うことが必須です。依頼する業者には床材タイプを伝えた上で、「艶やかにしたい」「傷がつきにくくしたい」といった要望を出して、提案してもらうやり方が失敗しない方法です。

主要コーティングごとの特徴と比較

コーティングは主に使用する塗料により分類されますが、例外的にUVコーティングは紫外線硬化型塗装を表す言葉です。UVは最近では水性タイプもありますが、ここではポリエステルアクリレート樹脂を使用する油性タイプを取り上げます。

ガラスコーティング

シリカを主成分に含む無機系塗料です。JIS規格の鉛筆硬度試験で6~9Hといった非常に硬い塗膜を形成するのが特徴で、光沢はやや控えめな自然艶です。溶剤はIPAやブタノールといったアルコールのため揮発臭が穏やかです。

UVコーティング

工業向けのコーティング技術を、手で持てるほどの小型の紫外線照射機を利用することで秒単位の塗膜硬化を実現しています。塗膜は鉛筆硬度2~6Hとガラスコーティングに近い硬度があり、艶ありタイプは高光沢です。

シリコンコーティング

UVとかわらない塗膜硬度ですが紫外線照射機などの機材が不要のため、よりリーズナブルです。ただし、同じシリコン塗料でも品質に幅があるのが注意点です。フローリングに見合った高品質なものを採用すると効果的に床を保護できます。仕上がりは高光沢です。

環境配慮型ウレタンコーティング

水性に分類されますが微量の有機溶剤を含みます。環境配慮の観点から従来の油性ウレタン塗料を水性化したものです。安全性が高く、耐久性などの性能は油性ウレタンと変わりません。光沢のバリエーションが多いのも特徴です。

水性ウレタンコーティング

水性だからといって水で溶けるということはありませんが、他のコーティング種類と比較すると一段階強度が劣ります。塗膜剥離が容易なためリコートを前提に施工するにはよいでしょう。

フローリングコーティングが必要な理由

フローリングコーティングは、床材を美しく保ち、長持ちさせるために非常に有効な手段です。とくに、ダイニングテーブルの周り、直射日光のあたる掃き出し窓の前、生活動線では、傷や摩耗による損傷や汚れが避けられません。
最近主流のシートフローリングは、ワックスと馴染みがよくないため自分で行うメンテンナスが難しい面があります。専門の施工店のよるフロアコーティングを導入することで、耐久力のある保護膜をフローリングに実現することが可能です。これにより、フローリングの寿命を延ばし、メンテナンスの手間を減らすことができます。

施工の流れと費用相場

一般的な施工ステップ

  1. 見積り依頼:見積りフォームの項目に入力し図面を添付して送信します。
  2. 見積り提示:2営業日以内にメールで送付されます。
  3. 質問・相談:メールのやり取りで理解を深めます。
  4. 現地調査:既存物件の場合は現地にて状態確認が必要。
  5. 申し込み:意思決定を伝えます。
  6. 施工:フローリングコーティングの実施。
  7. 確認:硬化乾燥後に仕上がりを確認します。

お電話やファックスを利用した見積り依頼も可能です。
施工日は希望の期日を予約するには早めに申し込みましょう。
施工後の確認は当日中に可能なコーティングと、翌日になるものがあります。

費用の目安

フロアコーティングの費用は、コーティング種類、施工面積、業者により異なります。ここでは、一般的な価格相場について解説します。

【新築マンション3LDK(施工面積:50㎡)の場合】

  • 高価格帯のコーティング(ガラス・UV):20~30万円
  • 中価格帯のコーティング(シリコン・環境配慮型ウレタン):15~25万円
  • 低価格帯のコーティング(水性ウレタン):10~15万円

通常、㎡単価+基本料金で価格は算定されます。他の費用としては下処理費用や家具移動割増費、出張費などが加算されることがあります。また、面積が増えると、それにともない割引がなされることも多いです。

工事期間と入居(引っ越し)タイミングの目安

一般的な大きさのマンションや一戸建ての施工は、新築なら1日で完了することがほとんどです。中古や入居している物件の場合は、ワックス剥離などの下処理方法や家具移動の有無により、2日間以上かかることもあります。
入居(引っ越し)は施工完了日の翌々日以降が推奨されることが通常です。

よくある質問

Q
DIYでもできますか?

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どのくらい持ちますか?

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ペットや小さな子供がいても大丈夫?