UVフロアコーティングのUVとはultravioletの略です。紫外線のことをいっています。そのため、なかにはサンオイルやサングラスのように紫外線をカットする機能のあるフロアコーティングと勘違いしている方もいるようです。
本来の意味は紫外線照射型の塗料ということです。紫外線照射器という大きな照明器具のようなものを使用します。それをフロアコーティングの現場にもちこみ紫外線を照射して塗膜を硬化させます。塗料のなかに紫外線に反応して瞬時の硬化する触媒が含まれているのです。もともとは工場の生産ラインのような整備されたところで活用されていた塗装技術です。
そのような塗装技術を用いるメリットはどういったところにあるのでしょうか。詳しく解説していきます。
なお、UVフロアコーティングは油性タイプが主流ですが、最近では水性タイプもあります。同じUVフロアコーティングでもこの両者はかなり性質が異なります。この記事では油性タイプに限定して解説いたします。
UVフロアコーティングの性能評価
各項目を5段階評価で表しています。
総合評価・・・・・・ ★★★★☆(平均3.9点)
どんなご家庭に合うか
- やんちゃ盛りのお子様がいる
- ペットを飼っている
- 強い光沢感を望んでいる
概要
UVフロアコーティングには紫外線により硬化する触媒が含まれているということはすでに述べましたが、これはあくまでも塗料の副剤にあたる部分です。
塗料の主剤は主に油性ウレタン樹脂が用いられることが多いです。したがってUVフロアコーティングは紫外線硬化触媒を含む油性ウレタン塗料を用いたフロアコーティングといえます。
油性ウレタン塗料といえば従来から様々な産業で使用される塗料です。フロアコーティングにおいては肉厚のある強度の高い塗膜を形成します。とても光沢感のある仕上がりになります。
一方、油性ウレタンを使用したUVフロアコーティングは比較的、強い有機溶剤を含むため揮発性の臭気があります。
有機溶剤の強さゆえ一部のシートフローリングでは密着不良が生じるといったケースも報告されています。シートフローリングへのUVフロアコーティングをご検討の方は必ず業者へ確認するようにしてください。
シリコンやガラス、水系ウレタンコーティングが台頭してくるまではUVフロアコーティングはワンランク上の格別なコーティングでした。
とくに木質突き板のフローリングに施工すると、光沢感の強い素晴らしい仕上がりになります。また床材への密着性も高く、床保護効果なども大変優れています。
ただし紫外線を照射するということのメリットについては疑問符が残ります。詳しくは記事の最後のほうで説明します。
床保護効果
(傷・磨耗の防止効果)・・・・・・ ★★★★☆
シリコーン系のガラスコーティングやシリコンコーティングとの比較では塗膜硬度がやや低い。ただし塗膜自体は肉厚で床そのものを守る効果としては優れたものがある。
(経年劣化の抑制)・・・・・・・ ★★★★☆
日射や乾湿によるフローリングの劣化を抑制する効果については優れた性能を発揮する。すでに劣化しているフローリングへの対応度も高い。
汚れ防止効果
(マジックなど)・・・・・・ ★★★☆☆
色素は粒子が細かく染みになりやすいがフローリングに染みがつくのを抑制する効果がある。しかし水系ウレタンコーティングの塗膜上には染みがついてしまう可能性が高い。
(黒ずみ)・・・・・・ ★★★★☆
フローリングは手垢、皮脂、油膜などで黒ずんでくるが汚れ落としが簡単になる。
耐久性
(寿命)・・・・・・ ★★★★☆
少しずつは傷つき・磨耗するが長期間に渡り床を保護し続ける。目安としては子供2人の4人家族で10年前後だろう。
美観
(艶感・質感)・・・・・・ ★★★★★
好みが左右するがフロアコーティングのなかでもっとも光沢感がでる。
滑り防止効果
(足元のグリップ感)・・・・・・ ★★★★★
滑り防止効果はとても優れている。ペットの粗相などにも強いのでペットを飼っているご家庭には適している。
安全性
(臭気)・・・・・・ ★★★☆☆
フロアコーティングに使用される塗料はホルムアルデヒドにおいてはF☆☆☆☆(エフフォースター)の認定を受けているものがほとんどだ。建築基準法において無制限に使用してよいというお墨付きを得ている塗料ということだ。ただホルムアルデヒド以外の揮発性化学物質に関しては正直なところわからない。臭気はシンナーのような揮発性の刺激臭がする。
床材との相性
(突き板フローリング)・・・・・・ ★★★★★
密着性がよく推奨できる。
(シートフローリング)・・・・・・ ★★★☆☆
要注意の組み合わせだ。業者によく確認してほしい。
(無垢|塗膜性仕上げフローリング)・・・・・・ ★★★★★
密着性がよく推奨できる。
再施工性
(リコート)・・・・・・ ★★★☆☆
剥離剤によりUVフロアコーティング塗膜を溶解して除去することは不可能だ。重ね塗りすることは可能だ。
工事価格
(価格)・・・・・・ ★★★☆☆
価格帯はフロアコーティングのなかではやや高い。
UVフロアコーティングの本当
紫外線を照射することの本来のメリットは瞬時に硬化するということです。例えば、携帯電話のケースのようなものは吹付け塗装後、紫外線照射することですぐに硬化しますから間を空けず次の作業工程へと移ることができます。実質、歩留まりが生じませんので製造現場で重宝されるのです。
ところが現場で行うフロアコーティングでは塗装後、ある程度の時間をおかないと塗膜面が平らに均されません。また工場のように紫外線照射器が備えつけられているわけではありません。持ち歩きしながら照射していくということは、足跡をつけてしまうリスクもあります。
そのためフロアコーティングにおけるUV塗装の実際は、塗装後ある程度の時間は放置して紫外線照射を始めることとなります。
どうしても油性ウレタンで床コーティングしたい方にとっては、いくらか早く硬化しますのでメリットがあります。
ただし水系ウレタンコーティングやガラスコーティングでは大体1時間から2時間程で歩ける程度まで硬化します。フロアコーティングにおいては製造現場での塗装ほどは利点がないように思えます。
紫外線照射器はけっして安価なものではないですし、紫外線の波長を触媒にマッチさせるためのチューニングを定期的に行う必要があります。
これらは結局のところ工事費用に反映され、通常の油性ウレタンよりも高価なものになります。
まとめ
UVフロアコーティングならではのメリットについては懐疑的なのですが、油性ウレタンコーティングとしてみれば一点を除いて大変優れたものです。
特長は安定した密着性、肉厚な塗膜、床保護性能と強い光沢感にあります。デメリットとしてはシンナーのような臭気があげられます。
施工後しばらくは臭いますので、施工してからご入居まで少し間のある方はいいかもしれません。理想をいえば1週間位は毎日窓開けをして空気の入れ替えをしたいところです。
住宅のフローリングの主流がシートフローリングへと変遷しつつある昨今では、UVフロアコーティングも水性化が進んでいるようです。これについては、また別の機会に解説いたします。