ある日、電話が鳴り受話器を取ると「フローリングを何とかしてほしい」と窮状を訴えられました。ある業者へコーティングを依頼したところ施工実施の当日に施工に適さないとキャンセルをされてしまったとのことです。

さらにお話を伺うとフローリングはオイル仕上げの無垢床材とのことです。これをコーティングするための下準備として表面のオイルを除去する作業を進めていたそうです。ところが作業半ばでコーティングできないとギブアップ宣言。半分だけオイルが除去された状態では困りますのでオイル除去だけは頼み込み全範囲やってもらったそうです。

なんとか入居日までに施工が可能ならフロアコーティングを完成してほしいというのがお客様の依頼です。早速、現地マンションへお伺いし現状の確認をしましたが、控えめにいってもなかなかの酷い状態でした…。

問題点とその対応

施工前の状態

当社へ依頼されたときの状態

主な問題点は以下のとおりです。

  • オイル除去の際にパッドで強く擦ったのか、表面の木繊維が逆立ちがガサガサになっている。
  • 色が抜け落ちている。
  • 足跡やマスキングテープ跡を含め染みになっている汚れが多数ある。

とりわけ色については元の写真を見せていただきましたがキレイなブラウンから何段階も退色しています。お客様がっかりするのも無理ありません。

しかしコーティング専門業者とはいえかなり難易度の高い案件です。(正直に言うとコレ無理じゃねって一瞬思いました。)
お客様の窮状を打破するため当社がやるべきことは以下のようになります。

    1. 色を原状へなるべく戻すこと。
    2. 表面をスムーズにすること。
    3. コーティングにより床保護効果を付与する。
    4. メンテナンス性の高いフローリングを実現する。

このなかで特に難しいのが1と2です。

色をある程度均一にムラなく定着させるというのは簡単ではありません。木部着色ですから塗りつぶすわけではないのです。木目が見えるよう透明塗料で塗るのですが希釈量や塗り回数で色の濃さが変わります。また、オイルが残っているとムラになる可能性もあるのです。

表面をスムーズにするには研磨作業が必要です。もともと素地仕上げやオイル仕上げの無垢フローリングの場合、コーティングを塗布すると水分により繊維が逆立ってくることがあります。それをケバとり研磨といってサンディングペーパーもしくは研磨パッドで滑らかにするのです。ところが今回の状態はかなりひどく、どこまで戻せるかが気がかりなところです。

ビフォア/アフター

2日間の工期で1.着色、2.下塗り・研磨、3.下塗り・研磨、4.仕上塗りという工程を行いました。もちろん実際には各工程ごとに確認と部分的な補修や清掃もあります。最初の状態を考慮するとまずまず上手くいったと思います。

ビフォア

ビフォア

アフター

アフター

実際に行った施工内容については以下をご覧ください。

無垢フローリングの着色とコーティング

着色

和信(塗料メーカー)の木部着色剤を使用しました。カラーは「オーク」です。濃く着色すると薄く戻すことはできませんので、やや希釈を多くしてローラーですり込むように塗布します。

チョイスしたカラーが合っていても塗り方で濃くなったり薄くなったりしますが、おおよそ思い描いた通りの色合いで着色できました。あたはコーティング塗膜がのったときにどう見えるか、それが大事なんですよね。

着色作業

ローラーでカラーリング

下塗りと研磨作業

Bona(塗料メーカー)のメガ-マットを下塗り剤として塗布し乾燥後に研磨パッドをポリッシャーに取り付け塗膜表面を研磨しました。壁際などは手作業で研磨します。この工程を2回繰り返します。

どうしても平らにならないガサガサは残りますが、大部分はコーティングと研磨でスムーズになりました。ガサガサの残るところは部分的に処置しますが無理すると塗ったばかりのコーティング塗膜や着色まで取れてしまいますので、ここはほどほどにします。

足跡のような染みなどはこの段階でほとんど判別つかなくなりました。ちなみに今回マット(艶消し)でコーティングしたのはお客様の希望でもあったのですが、グロス(艶あり)よりもマットのほうがフローリング表面の問題(シミや傷など)を見えなくしてしまうカバーリング力があります。

下塗りして研磨した状態のフローリング

1回目の下塗り後

仕上塗り後

2回目の下塗り後

仕上塗り

同じくBonaの今度はトラフィック-エクストラマットを塗布しました。商業施設など重歩行区域での使用を目的につくられた非常に耐久性や床保護効果の高いフロアコーティング剤です。
下塗りと別の塗料を使用する理由はフローリングの伸縮による塗膜の割れや剥がれを起こさないためです。

詳しく説明するとトラフィックはかなり硬い塗膜を形成します。これを下塗りから複数回塗布するとフローリング表面に硬すぎる塗膜層が生じます。無垢フローリングは季節要因によりわずかながらも伸びたり縮んだりしますので、その動きにうまく追従できなくなる可能性があります。だから下塗りの2層はトラフィックより柔軟なメガを使用するのです。

光沢についてはとくに無垢フローリングの場合はマット(艶消し)やエクストラマット(超艶消し)を塗布すると元来の自然な木の風合いが損なわれませんのでおすすめです。一見するとオイルなどの自然塗料で仕上げたかのようなぬくもりのある雰囲気に仕上がります。けっして体育館のフロアのようなテカテカとした人工的な艶感にはなりません。もっとも塗膜はついていますので触ると塗膜感は感じられやや木の触感とは異なります。

仕上塗り後

仕上塗り後

無垢フローリングをフロアコーティングするメリット

今回の無垢フローリングのように表面がオイルなどの自然塗料で仕上げられたものは汚れやすく、水が付着するとシミのように水滴跡が残ることが多々あります。同じ無垢フローリングでも表面にウレタンなど塗膜性塗料で仕上げられたものはそうでもありません。

自然塗料は表面に固定的な塗膜を形成せず床材表層に含侵して保護するものです。塗膜と比較すると汚れ防止効果はやや劣り、定期的に自然塗料を塗らないと汚れやシミが生じやすくなります。天然の木材ならではの風合いが保たれる自然塗料はそれはそれで魅力あるものですが、状態を維持するには手間がかかります。

その点では当社が推奨するBonaの水性ウレタン塗料によるコーティングなら施工後は手間をかけなくても長期間に渡り状態は維持されます。以下に主なメリットを挙げます。

  1. 塗膜効果により「傷」「摩耗」「シミ」がフローリングに生じることを抑制します。
  2. 長期間(一般的な使用状況で約10年間)再コーティングを必要としません。
  3. 上記にもかかわらずマット(艶消し)を採用することで無垢材特有の風合いを損ないません。

一般的にオイルなどでのメンテナンスは6か月に一度ほど必要となります。塗るのは一般ユーザーでも難しくはありませんが家具を移動したり事前の清掃を行う必要がある上、塗布後しばらくは上を歩くことができません。

フロアコーティングなら最初こそ専門業者へ依頼する必要がありますが、一旦、施工した後はより強固な床保護・汚れ防止効果が備わり長期間その効果が継続します。現状が自然塗料仕上げであってもフロアコーティングは大抵の場合可能です。汚れや水滴の付着でお困りなら、ぜひ、フロアコーティングをご検討ください。

安全性について

なかにはフロアコーティングの安全性について不安な方もおられるかもしれません。当社が採用する水性塗料のメーカーであるBonaは世界に先駆けて安全性の担保された水性塗料を開発した会社でもあります。環境への配慮や人体への影響については十分すぎるほど配慮された製品です。

揮発性有機化合物に対しては日本よりもはるかに厳格なEUの安全性基準をはじめ世界7か国の認証を受けています。すべてのフロアコーティングが安全ではないと思っているとしたら、ぜひこの機会に改めていただければ嬉しく思います。

Bona7つの安全認証マーク

日本、アメリカ、ドイツ、フランス様々な国の安全性に関する認証を取得済み

ちなみに亜麻仁油、カルナバロウ、蜜ロウなどの天然由来の成分でつくられた自然塗料だからといってイコール安全ではありません。自然塗料といっても製品化するには当然他の成分も必要となります。ドイツメーカーの製品などはEUの厳格な安全基準が安全性の担保となりますが日本では自然塗料の明確な定義はありません。なかには本国では自然塗料として流通していないものまで日本では自然塗料として販売されていますので注意が必要です。

ちょっと脱線しましたが自然塗料を塗りたい方で安全性を求める方はちょっと気にしてください。(またまたちなみにですが当社自然塗料によるコーティングもします。ウッドデッキなどはおすすめです!)

フロアコーティング業者へ依頼するなら

無垢フローリングであっても表面にすでに塗膜塗装された製品もあります。その場合は比較的ほかタイプのフローリング、例えばシートフローリングや突板フローリングと変わらないやり方でコーティングできます。ところがオイル仕上げや素地仕上げの場合は、施工の工程、施工道具、使用塗料、スキルなどが違ってきます。

フロアコーティング会社のなかには新築コーティングを中心に営業されているところも少なくありません。新築といえば最近ではほぼシートフローリングですから経験に乏しい業者も多いようです。業者選択の際は見積りだけで判断するのではなく、どのような工程で施工するのか、塗る道具や塗料、施工実績について質問するようにしてください。交渉の相手が営業担当者でよくわかっていないようなときは直接職人に繋いでもらいましょう。

質問するのに遠慮することはありません。日用品の買い物ではありません、大切なマイホームにかかわることだからです。臆することはありませんし信頼のおける業者ならむしろ喜んで答えてくれると思います。返信が極端に遅かったり迷惑そうな素振りがみえる業者、施工の保証や保険についてばかり力説する業者、「とにかく当社を信用して任せてください」みたいなことを言う業者はNGです。

最後に

無垢フローリングは本当に素敵な床材ですし最近では貴重品です。大事に使えば一生モノですからサスティナビリティの面からも優れています。

フロアコーティングやメンテナンスのことでお困りごとがあれば、ぜひご相談ください。スーパーマンでもマジシャンでもありませんからお力になれない場合もあるかと思いますが、可能な限り尽力いたします。